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ときどきコラム

188

2009年3月23日

たまゆらの火災

行政が見て見ぬふりをしているという事実

3月20日夜に発生し、10人の死亡者が確認された群馬県での火災事故。

この惨禍の原因は施設のずさんな運営にあるが、行政の怠慢は明らかである。

「入所施設が不足している」ことをここで言及しないとしても、

少なくとも火災警報器の設置義務がある。

行政は、この建物が福祉施設でもなければ住宅でもないというのか?

報道も混乱している。

社会福祉施設ではないが、共同住宅である。

人が住む建物には火災警報器の設置義務がある。

私には、この惨禍が行政の責任の押し付け合いの結果としか思えない。

一定規模以上の福祉施設に設置が義務付けられいるスプリンクラーや警報設備と、住宅用の火災警報器の性能の差は歴然としている。たまゆらに家庭用の火災警報器があったところで、夜勤の職員が一名だけ、何ができただろう。

しかし、住宅用の火災警報器でも各部屋連動式や外部通報型もある。

実際、近隣の特養ホーム職員が救助に駆けつけて、数名を助けている。

数万円の費用で、被害はかなり小さくなったはずである。


たまゆらって何?

1.共同住宅である

1997年の確認申請では、この建物の用途は「長屋」(22日付け毎日jp)

建築基準法上の「長屋」の定義

〔2以上の住戸または住室を有する建築物で、隣接する住戸または住室が開口部のない壁または床を共有するが、廊下・階段等の共有部分を有しない型式の建築物〕

しかし、報道を見る限り、火災発生時のたまゆらは、長屋ではなく共同住宅である。

建築基準法上の「共同住宅」の定義

〔2以上の住戸または住室を有する建築物で、長屋以外のもの〕

北別館平面図

 


2.高齢者向け優良賃貸住宅ではない

高齢者向け優良賃貸住宅の定義

〔高齢者が安全に安心して居住できるように、「バリアフリー化」され、「緊急時対応サービス」の利用が可能な賃貸住宅。また、高齢者の生活を支援するために、任意の付加的サービスを提供したり、社会福祉施設等を併設することで、より安心して住み続けられる住宅とすることもできる〕

 

3.社会福祉施設ではない

たまゆらでは、どんな生活が営まれていたか?

入居者二十数名のうち15人は墨田区から紹介されていた生活保護受給者。

墨田区の紹介でやってきた60代の男性の場合、84000円/月で入浴でき(介助されていたかどうか不明)食事も三食提供、「食べさせて寝かせているだけ。区役所はここにぶっこんじゃえばいいと思っているようだ」という。(21日付け朝日朝刊)

とても「養護老人ホーム」の基準を満たしている施設ではない。

概念が近いと思われる生活保護法による「救護施設」の定義

〔身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設〕

いかんせんたまゆらを運営するのはNPO法人。

NPO法人は第1種社会福祉事業は運営できない。

たまゆら関係者自体は「実体は有料老人ホーム、しかし基準が厳しいため、あえて届け出していない。」と述べている。(21日付け朝日朝刊)

「県は遅くとも06年7月には、『高齢者を含む生活保護受給者が入居しているようだ』という情報を得ていた。ところが、文書で問いあわせているだけで一度も訪問もしていないようだ。」

(21日付け朝日朝刊)

なぜ?文書で問いあわせるだけで訪問しない?

行政が見て見ぬふりをしていたという事実

 

4.火災警報器の設置義務がある

21日付け朝日朝刊によると、

渋川広域消防本部は「現時点では消防法に触れる違反行為はないとしている」

「渋川市などの広域圏は、08(平成20)年6月から、すべての住宅への火災警報器の設置を義務付けている。この条例は、住宅が対象となっているため、福祉施設のたまゆらには適用されず、ここでも法の網から漏れる結果になった。」

このコメントが渋川市広域消防本部からでているとしたらおかしい。

社会福祉施設ならば、消防法により防火対象物であり消防用設備等の設置義務がある。

たまゆらの床面積は、届け出上は約200u。(これも届け出なしに増改築していたらしいが)現行消防法上は消化設備や警報設備の設置義務がない。消防法が改正され4月1日に施行されることになっている。

しかし、たまゆらは公的には社会福祉施設ではない、と認識されていたのではないか。

同消防本部だけは社会福祉施設だとしていたのか?

たまゆら消防法の区分にあてはめると、「集団居住のための施設」に該当する。

だれが何と言おうと、少なくとも住宅である。

住宅である以上、火災報知器の設置義務がある。

同広域消防本部のホームページでも、次のように明記している。

「既存の住宅については、平成20年6月1日から設置が必要です。

戸建住宅、店舗併用住宅、共同住宅、寄宿舎など全ての住宅が対象です。
 (ただし、すでに自動火災報知設備やスプリンクラー設備が設置されている場合は、住宅用火災警報器等の設置が免除される場合があります。)」

 

たまゆらには火災警報器の設置義務がある

行政が見て見ぬふりをしているという事実

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