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2003年3月1日号
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《専門店》の責任とプライド
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先日、NHKテレビで靴下専門店「靴下屋」の社長さんが紹介されていたのをご覧になりましたでしょうか?
私は放映時に見れずビデオで見たのですが、とても勉強になりましたので、ご紹介します。
15歳くらいで丁稚奉公してから靴下の販売一筋で、
全国200店舗以上の専門店を出店し上場も果たした社長さん。
丁稚時代からいつも自分は素足でサンダル履き、
いつでも靴下の履き心地を自分の足で確認するという。
しかし、3足千円の輸入品に押されて売れ行きは落ちている。
全国から担当者が集まり新発売製品を決める営業会議で、この社長さんが雷を落とした。
最近売れ行きが落ちている、履き心地はいいが地味な「無地」を減らして、
売れ筋の柄物を増やそう。と言う意見をきいて。
「何寝ぼけたことを言うとるんじゃ!(大阪弁。私も大阪生まれなので懐かしい・・)
見栄えはいいが履き心地の悪い靴下を売ろうとは、血迷ったんかい。売れりゃあええのか。
ほんとうに履き心地がいいものを売るのが専門店じゃろう!」
と怒り、社長さんは会議から退席。
その後の独白。「自分で自分が情けない。会社組織にしたのが間違いだったのか」と、
自分の理想と会社の存続をかけた営業の狭間で悩む・・・。
その後、自ら新製品の開発に取り組み、メーカーのリーダーを教育しながら、
自信を持って販売できる無地の新製品を完成させ店頭に並べるまで。
・・・というドキュメントでした。
「専門店の責任とプライドにかけて」というこの社長さんの心意気に、私はハッとしました。
えらそうに「福祉住環境コーディネート」という看板を下げて、
ほんとうにふさわしい仕事をしているのか?
講座の講師に呼ばれて「先生」などと言われていい気になっているところが、
私のどこかにあるはずです。
住宅改修の依頼を受け現地調査にうかがったときなど、
その「お客様」は初対面で私のことは何も知らない場合がほとんどです。
ケアマネジャーと同行することが多いのですが、
私を紹介するときに「手すりの業者さんを連れてきました」
なんて紹介されてカチンときたり・・・。
あくまで仕事を依頼してくださるご本人が主役で、
日々そばにいて介護にあたるご家族がそのサポーター。
私は仕事を依頼される業者で、自分の持っている知識と経験を生かせるならば使っていただく、
という立場です。
これからも研究者や傍観する相談相手でなく、
実践する専門店であり続けたいと願っています。
社会福祉も建築も、実践しなくては意味がないと思っています。
この仕事を続けていく限り、専門店の責任を果たせるよう、日々勉強を重ね、謙遜であり続けるように。
自分の力だけに頼ることがありませんように。