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ときどきコラム

207

2010年9月15日

2011年4月11日

競泳国際大会代表選手選考会

住宅改修現地調査にうかがったお宅が、浜松市総合水泳場のすぐ近くで、

打ち合わせが終わったのが決勝競技の最中。

私はもっぱら平泳ぎの競技に出ますから、

ナマの北島康介選手の泳ぎをどうしても見てみたい!の一心で、

事務所代表の許可を得て、私が自問自答しただけですが、

会場へ走りました。

毎日半徹夜の日々だっちゅうのに。

清掃工場の余熱を、

蒸気と電気として水泳場で使用しています。

 

旧浜名郡雄踏町(現在は浜松市と合併)出身のフジヤマのトビウオ古橋廣之進氏を記念してつくったという

浜松市総合水泳場。

後輩に「魚になるまで泳げ」と言わはったんですよお〜

3月11日の大震災で東京・辰巳国際水泳場が使えなくなり、急遽こちらで開催となりました。

この人の泳ぎを見るために私は来たんですよお。
富田選手(中京大)が昨年世界最高タイムで一位、北島選手は二位。それでも派遣標準記録を上回り、 「(スタート前は)いい緊張感だったね。日本でこのレベルで競っているのは世界で戦う上で強みになると思う。夏は(冨田と)2人で表彰台に上がりたい」とのコメントでした。

花見どころとちゃうやろ!

この桜並木にまったく人影なし。

人間の思いとは別に桜は咲きます。4月9日浜松市内。

スロープについての質疑応答

「ニシムラは生きているんか?!」との声があったとか、なかったとか。

昨年9月から、なんと7ヶ月のご無沙汰です。

公私近藤勇の事情多々あり、まことに申し訳ございませんでした。

「更新しなくちゃなー」と思いつつ、相変わらずの平均睡眠4.5時間を続けている日常、こんなていたらくをさらしておりました。

年度も替わるし、何とかきっかけをつかまえて、鷲が上昇気流をつかまえるごとく?、更新の機会を探っていたところでした。

こんな時に、ナントイウコトデセウ、このサイトの読者から質問がメールが届きました。

このかたは大学で建築を学んで社会に出て、家庭を持ってからホームヘルパーとなり、

「・・高齢者が、家族、地域からも離れ、しかも古い住まいでさみしく暮らす姿を見て、さらに、住宅改修もうまく運用されない実態に、はがゆい思いをし、 現状を把握することを始めました。」「現在、B大学大学院C教授の下、研究を進めています。 あと、役に立てばと思い、福祉住環境1級と2級建築士を取りましたが、 一切役に立っていません・・・」

驚くべき向上心と強い意志を持ったかた、尊敬に値するかたです。

と、いうわけで、この質疑応答の内容を、了承を得、以下にほぼそのまま掲載いたします。

メール1 Aさんから最初の質疑メール

メール2 西村からの返信

メール3 Aさんからの二通目

メール4 西村からの二通目

メール5 Aさんからの三通目

Aさんから三通目のメールの最後に私への期待が述べられています。

ありがたいことです。

でも、

東日本大震災の被災地に対して何もできていない自分が

情けないです。ほんのわずかな義援金を送るだけ。

これから新しいまちを村をつくる時、

避難場所や仮設住宅や疎開先で困難な生活を送る方々を見て

何もできなくては

福祉住環境コーディネーターも居住福祉学会もクソもないです。

これからできることを模索しています。

1.最初にいただいた質疑のメール

・・・こちら、大学院で「終の棲家」について修論に取り組んでいます。
以前より、先生の「成果」から、多くのことを学ばせて頂きました。

住宅改修において、スロープに手すりを設置しますが、壁(手すり壁)がないと、
ベビーカーや車椅子のタイヤが脱輪しないかと、心配になりました。

車椅子専用だと、手すりよりも落下防止のための、低くてもよいから、
壁があった方がよいのでは。

公共と言えるほどではない、分譲の集合住宅や、個人宅の屋外のケースなのですが。
今後、スロープは改修が進み、増えていくと思っています。

ぶしつけで 申し訳ありません。
先生の益々のご活躍を楽しみにしております。

神奈川県 A


2. 西村よりの返信メール

・・・前文はグダグダとホームページ怠惰のいいわけなので割愛。

あなたのおっしゃるとおりです。
私は、スロープを造る際には、 脱輪防止用の「立ち上がり」を設けるようにしています。

スロープと踊り場も含めて、 脱輪だけでなく、手すりの柱(専門用語では「手すり子」と言います)の
間隔が広い場合は、その柱の隙間からの転落も考えられます。

特に踊り場の場合、進行方向によっては 「手すりの隙間から飛び出す」恐れもありますし、
実際に、利用者には恐怖感を与えてしまいます。

建築基準法施行令では、特殊建築物(集合住宅も含まれます)の
2階以上のバルコニー・階段の踊り場等に
「高さ1.1m以下の手すり・壁・柵・金網等を設ける」という規定があります。
また、手すり子の間隔は11cm以下という目安もあります。
11cmとは、子供の頭が通らない(くぐれない)サイズとされています。

理想としては、「壁」を造れば、転落・落下を防ぐことができます。
しかし、問題は費用です。
壁を造るとすれば、景観や強度を配慮すると、
ポリカーボネート板が最善かと思われます。 しかし残念ながら、かなりの金額がかかります。
スロープ本体を造ると同じくらいの費用が見込まれます。

個人宅の、家屋に至るスロープには、
手すり+脱輪防止用の「立ち上がり」設置が妥当かと思います。
車いすやベビーカーの小さなキャスターなら、高さ10cm程度で有効です。
スロープの場合、進行方向からよほどはずれない限り「立ち上がり」だけで
脱輪を防ぐことができます。
また、コスト面での理由の他に、個人宅では利用者が限定していることが言えます。
使い慣れていると考えられるためです。
介助者としては、家族やデイサービスの送迎担当者、
あるいは、いわゆる介護タクシーの運転手などが想定できます。

公共施設や集合住宅などでは、転落・落下の危険がある高さのスロープには、
手すりだけでなく壁などの脱輪防止策は必要と考えられます。
デザイン上の処理、コストの関係で壁を設けない場合には、
脱輪防止用「立ち上がり」を設けるか、 粗い間隔の手すり子

(11cmの必要はないとしても、45〜60cm位か) とすべきでしょう。

参考までに私の担当して造ったスロープの写真を添付しますので、ご覧下さい。
既にホームページに記載した例もありますが。

この返信文を書くに当たり、これまでの工事例を振り返ってみましたが、
あまりスロープを造る工事は多くありません。 一年に一回くらいのものです。
利用者やケアマネが「スロープを造りたい」と希望されることは多いのですが、
歩行できるかたの場合、私は段を設けること+手すりを勧めます。
よほど緩い勾配でないと、歩行者には危険なことが多いからです。
ご承知のように、スロープの標準勾配値は1/12ですが、

個人住宅でこの勾配のスロープを造れることはまれと言えます。
段差が30cmなら、水平距離(スロープの長さ)は3.6mにもなりますものね。

添付写真・最上段右のベランダ(踊り場)には、

手すりだけで「立ち上がり」を 取り付けていません。
高さが低いベランダですが、ここにも「立ち上がり」を設けるべきだったかと、
このときは、予算がなかったのですが、 いまになって反省しています。

いかがでしょうか?参考になりましたか?

3.Aさんから二通目のメール

・・・

2カ所の写真を添付します。
最初の2枚は、近所の公社分譲の団地で、バリアフリー化に熱心な管理組合が頑張っている所です。
修繕計画に無いので、費用の捻出が難しいようです。
次の2枚は、利用者さんのお宅で、親思いの子供たちが改修を進めたとのこと。
完全車椅子利用で、施設の送迎担当者が、室内から車まで移動させます。

この2箇所を比較し、疑問に感じたのでした。
そして、添付して頂いた先生の成果を見て、改めて、確信が得られました。

これから、ますます、古い住宅、団地でバリアフリー化は進められていくと思います。
・・・

4.西村より二通目のメール

・・・

送付いただいた写真について、まず感じたことだけ、述べさせてください。

団地のスロープ。
「修繕計画にないため費用の捻出が難しい」とのこと。
住民が修繕積立金で造ろうと苦労されているのでしょうか。

バリアフリー新法では、共同住宅は特定建設物に該当します。
よって、施行令18条によれば
「九 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する居
室を設ける場合には、道等から当該居室までの経路のうち一以上を、高齢者、障
害者等が円滑に利用できる経路にすること等とすること。」

つまり、建築主が設けるべきとされています。
法律施行時の既存建物については、努力目標です。
建て主(旧公団)とは交渉されたのしょうか。

管理組合で対処しろ、といわれたとしても、
もっと交渉の余地はあると思われるのですが。
私は、建て主が費用負担して然るべきと考えます。

二枚目の写真のスロープには、折り返し(踊り場)がありますね。
建物から出るときには下り坂ですから、
介助者がいるなら、介助者が後ろ向きとなって、
間違っても踊り場部分から飛び出さないようにせねばなりません。
飛び出しても、垣根があるから大丈夫かな。
柵を設けないのは、垣根があるから、という発想かも。

後の二枚
スロープにしなかったのは、一段ずつ車いすを昇降すると言うことですね。
介助者がこの方法を確実にできるなら、良い選択だったと思います。
きっと、段差解消機も選択肢にあったのでしょうが、
機械に頼りたくなかったのかな。
最上段は掃き出しサッシの敷居と同じ高さになっているので、
雨水の浸入が懸念されます。
ひさしか屋根を掛けることを勧めたいですね。

・・・

5.Aさんから三通目のメール

・・・

まずは、写真の件ですが、
団地のスロープは、両側に手すりはいらないのか、あったとして、手すり壁にしないと、
子供が鉄棒にして遊ばないかと疑問に思ったのでした。

(西村注:子供が施設を遊び道具とすることについては、防ぎようがありません。

張り紙しても守るわけもなく、

「ここで遊ぶな、と言ったら、ここで遊ぼう、と言う」

少なくとも、鉄棒代わりに使っても壊れないようにつくるべきでしょうね。

落下して危険な高さと判断したら、手すり子か腰壁を設けるかですね。)


戸建ては、立ち上がり部分が無い と思い、
改めて「手すり」を調べてみると、屋内なら決まりがあるのに屋外がよくわからなかったのです。


ちなみに、戸建てのほうは、室内の床を張り足しているので、敷居部分が下がっており、

室内の床と、外のコンクリ床をたいらにするように薄い鉄板が準備されています。
まだまだ勉強不足でお恥ずかしいのですが、論文のテーマは、エレベーターのない古い団地は、

高齢者にとって終の棲家になるのか、なるとしたらどのような工夫が必要なのか、 なんです。
写真の団地は、市の「マンションバリアフリー化等支援事業」による補助金

(補助率1/3、限度額30万円)の利用を検討しているとのことです。

(西村注:先駆的な補助制度ですね。1/3、30万円は十分とは言えない額ですが、改修の呼び水となるでしょう)

私は、団地というのは、「賃貸」と思っていました。
現在、階段室型の「賃貸」団地の一部で、階段室型エレベーターが設置されています。

2.5階と4.5階の踊り場に停止し、居住者は必ず7段の階段を登るか下るのです。
しかしながら、URも公社も多くの分譲団地を造り、しかも中層の階段室型が多いのです。

ある階段室型の4階に住む利用者さんは、退院以来3年も外出してない と伺い、びっくりしました。

ということで、共同住宅とはいえ、分譲のしかも数件(階段室型)の特定の居住者に対しては何か策はないでしょうか。

(西村注:もっとも簡便な方法は、1階への住み替えが考えられます。

公営賃貸住宅で1階に住み替えを要望し、空き次第に引っ越した例を知っています。

しかし1階でも数段は上がらなくてはなりません。

場合によっては、ここにスロープが欲しくなるのでが、中階段型の住宅にスロープをつくる、

費用もスペースも余裕はないと思われます。残念ながら。

手すりを設けて何とか昇降するか、あるいは、段差用リフトを使用するという手段もあります。)


建築主との交渉がスムーズにいけば、高齢者・障害者の生活が豊かになりますね。
実は、分譲団地は特定建築物にならないと思っていたので・・・。
で、晴れた日には、団地を見て回っています。

先生には、まだまだ伺いたいことがいっぱいあります。
住宅改修の20万円の額と、項目は今後、どうなるのか。
(最近では、バリアフリー化は標準仕様だし)

(西村注:介護保険住宅改修費支給制度は、大きな変化はないと思われます。

支給率が減る自己負担率が増えることが議論されていますが介護保険そのものの改正によります。

介護保険以外の改造費補助の充実化が望まれます。

「バリアフリーの標準化」にはそれなりの意義はもちろんありますが、

個別対応についてこそ福祉住環境コーディネーターの役割があります。)


利用者のこだわりの生活をどう打破したか、先生とケアマネ、利用者とのバトルなど

福祉と建築は、切り離せないと思っています。
本当にお忙しいとは、思いますが、
多くの福祉・介護に関わる人が、情報を必要としています。
今後もよろしくお願いいたします。

 

 

 

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