2010年3月13日
7人死亡、 3月13日未明、札幌のグループホーム火災について考えました 2010.3.13 |
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驚いたのは、 3月11日夜九時NHK−TVの「ニュースウオッチ」で、 グループホームの防火対策について採り上げたばかりだったので。 まるで予期したように。 その次の夜です、この火災は。 この時間のニュースをみることはほとんどないのでが、 『グループホームの計画中止、相次ぐ』という特集が、新聞の番組欄に載っていたので視聴しました。 この特集での着目は、知的障害者グループホームの施設建設計画が各地で中止になっている、こと。 以下はこの特集の要旨。 以後、防火対策の見直しがなされ、建築上の規制が厳しくなった。 一般の住宅を使ってグループホームに転用を計画していたが、 新しい基準に適合させるには整備費用がかかりすぎるために断念している。 問題は、基準が自治体によって違うこと。 30の府県は「寄宿舎や共同住宅並みの構造とする」 (つまり耐火または準耐火構造に準ぜよ、ということです。西村:注) 9の県は「住宅のままで可」 8の県が「個別に判断」 厚生労働省障害福祉課のコメント「混乱があることは把握している。関係省庁と意見交換したい」 番組の結論は、「縦割り行政を改めて、早く国が判断基準を明確にすべき」 長妻さんや山井さんがいるうちに、明確な基準を作って欲しいですね。 昨夜火災が起きた施設は、有限会社が運営し、定員9=1ユニット、常勤職員7名。 民家を改築した木造2階建て。述べ床面積248平米。 改正された消防法でのグループホームに対する規制について、 詳しくは消防庁のパンフレットをご覧下さい。 この規模のグループホームに対する同法上の基準。 ○収容人員(従業員も含む)10名以上なので、防火管理者を専任する。 ○規模に関わらず適用される基準 自動火災報知設備(熱や煙を感知してベルを鳴らす) 火災通報設備(消防機関へ知らせる) 消火器の設置 ○275平米以下なので、スプリンクラー設備の必要はない。 この改正法令の施行日は2009(平成21)年4月1日ですが、 自動火災報知設備と火災通報設備設置の猶予期間が 2012(平成24)年3月31日まで認められています。 この施設には自動火災報知設備と火災通報設備は設置されていなかった。 まさしく、猶予期間内ですから。 防火管理者はいたのでしょうが、 義務である防火計画書の提出や消防訓練も実施していなかったもよう。 スプリンクラー設置補助金や避難態勢について、 札幌市議会の議事録にやりとりがあるので、一読ください。 一部転載 「・・・根本原因は、やっぱり株式会社、有限会社に根底がある。なぜかといったら、グループホームをやっていて、弱い人を助ける、困った人を助けるというしっかりとした福祉の精神が本当にあったら全員が(補助金申請の)手を挙げますよ、はっきり言って。もうけようとしてグループホームをやっているのだから、この人たちは、根底は。そこに一番の原因があると私は思いますよ。もっともっと福祉の意識というものをしっかり持った、だから、法人ではなくて株式会社とか有限会社をやっているような人たちが福祉の意識というのを本当に持っているのかどうか。・・」 偏見に充ち満ちた発言ですね。 それでも、防火管理者と経営者(権原者)の意識の低さは明らかです。 では、自動火災報知設備や火災通報設備があれば、犠牲者は救えたでしょうか? 当直の職員(女性24歳)は200メートル離れた交番から110番と119番に電話したとか。 よほど混乱したのか、一人を助けて外へ飛び出したのか。 警報装置があれば初期消火や避難が早くできて、いくらか被害が小さかったかもしれません。 当直1名で入居者全員の救助は不可能です。 当直を増やせば人件費がかかる。 どうすれば良いか? ○第一義は、火事を起こさないこと。あたりまえのことです。 「ストーブの火が干していた衣類に引火した」 信じがたいことですが、この火事の原因らしい。夜中の二時に。 当直者が洗濯物を干していたのか。 あまりに防火意識が低すぎます。 常態化していたのでしょうか。 ○せめて家庭用の火災警報器でも設置していれば、少しでも通報や避難が早くできたはず。 ○しかし、当直者1人で何ができるでしょう。 眠っている認知症高齢者8人を起こして避難させることは、まず不可能です。 ○ハード面の対策 各個室に火気がないなら(隠れて喫煙することまで想定するか) 個室があり、入居者が自力で避難できないことを考慮すれば、 共同住宅に準ずる構造にせざるを得ないか。 平屋建てなら直接屋外に避難できるとしても、 2階以上は準耐火構造とすべきか。 スプリンクラーの設置や2階以上に避難ステージがあれば緩和措置を設けるか。 275平米未満でもスプリンクラー設置を義務付け、補助制度を充実すべきでしょう。 設置猶予期間は短くすべきです。 ○近隣の力を借りる 避難訓練に参加を呼びかけ、火災発生時は駆けつけてもらい、 避難や初期消火に協力していただく。
今後、いろんな論評がなされて、消防法や建築基準法まで見直しがあるかもしれません。 認知症高齢者グループホームは数が増えすぎて、介護保険財政を圧迫していると言われています。 一方、障害者のグループホームは、脱施設・自立促進の場として期待されている、 施設ではない『家』です。 グループリビングのような住まいかたもあります。 『家』のかたちを尊重して、 最低限、万が一火災が発生しても燃えにくい、 避難可能な建築物とする規制をすべきと考えます。 障害者と認知症高齢者のグループホームは別基準とする、 台所だけは防火区画する、なども考えられます。 管理権原者と防火管理者には職務を徹底させるべき。 あたりまえのことをあたりまえにしていれば、犠牲者はでなかったでしょう。 以上、2010.3.14未明 2010.3.14夜追記 昨夜の記事に錯誤あり、訂正します。勉強不足・調査不足を恥じます。 この夜、従事していたのは当直ではなく、“夜勤”でした。 2006(H18)年度から1名以上の夜勤配置が義務付けられました。 これまでの報道で「ストーブの近くで入居者の洗濯物を度々干していること」がわかったとのこと。 また、「施設案内の看板もなく、近所の人もグループホームであることを知らない人がいた」 近隣住民に対して、非常時の協力要請どころか、 施設の存在そのものを知らしめていなかった。 事業の社会的責任を認識していない経営者が運営していた、としか言いようがありません。 事業認可していた市や、 防火対策の不備を知りながら是正指導を徹底しない消防署の責任もある、 と指摘されるべきではないでしょうか。 |