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住宅改修工事のための図面の読み方、描き方
vol.
タイトル
1
連載開始にあたって。【基本編1】平面図と展開図
2

【基本編2】基準線、モジュール、尺貫法

3
【実践編1】実測による平面図の描き方(1)
【実践編2】実測による平面図の描き方(2)
【基本編3】表現方法(図示記号)
【実践編3】実測による平面図の描き方(3)
vol.3 【実践編1】実測による平面図の描き方(1)

実測による平面図

 住宅改修費支給申請に使う平面図は、新築や増築のように「新たに設計する」わけではありません。

既に使用されている住宅を実測して作図するので「実測による平面図」と呼ぶこととします。

  

用紙

 私はkokuyo製「セクションパッド」エコノミータイプ(品番:レ−E520N)をいつも使っています。

A4サイズで50枚綴り、税込み210円。1枚あたり4円です。

エコノミーでしょ?

トレーシングペーパーとしても使える丈夫な紙質で、消しゴムを使っても毛羽立ちません。

ブルーの5o方眼線が引いてあります。コピーするとこの方眼はほとんど写りません。

議事録用紙に使ったり、グラフや絵、表を書くことにも適しています。

クリップホルダー(用箋挟み、画板のようなもの。100円ショップの品で充分)と一緒に使えば、現場でとても作図しやすくなります。

 

 実例を使った作図 

 

 この写真は、私が実際に担当して住宅改修を行い、また現在追加工事を検討中のお宅です。

写真から次のような情報が読み取れます。もちろん現地ではコンベックスルールを使って実測していますが。

○玄関サッシの間口は6尺=1820o

○南側庭に面した和室の掃き出しサッシ(「ほうきでゴミを掃き出せる」の意)の間口は9尺=2730o)

○廊下の巾は3尺=910o

○トイレの間口は3尺=910o奥行きは4.5尺=1365o

・・・・等々

ここでいう「間口」「奥行き」「サッシのサイズ」などは、すべてvol.1で解説した「基準線」間隔によるものです。

作図上のルール、注意点

1.方位

原則は、地図と同様に用紙の上を北とします。

しかしセクションペーパーを使う場合は方眼を建物の基準線にあわせるので、方位の案内記号を記入します。

2.縮尺

A4サイズに一般的な住宅の全体を描くためには1/50から1/100の縮尺を使います。

5o方眼用紙では、1/60で描くと、厳密には1マス5o→300oとなります。

しかし、便宜上次のように表すことによって、たいへん作図しやすくなります。

縮尺=1/60、1マス=1尺とみなす

マス目の数
尺・間(ケン)
o表記

1

1尺
303
3
3尺=半間
910
6
6尺=1間
1820

作業1.「基準線(通り芯)を描く」

図1

この作業は机上ではできません。用紙をもって、建物のはしから目で見て、寸法を確認しながらマス目を使って記入していきます。

1.用紙の向き、どこに描くか(配置)を決める

   まず建物のおおよその大きさを確認します。

   出入り口のドアや窓のサッシを目安にして「東西6間×南北3間半だから、用紙のここに配置しよう」と決めます。

   A4版セクションパッドには、横長方向では最大9間×6間(建坪54坪)までの建物が描けます。

   よほど大きな農家やちびまる子ちゃんの同級生・花輪君家のようなお屋敷、

       あるいは増築して「本人居室が渡り廊下でつながっている」ような住宅でなければこの用紙に収まります。

   さらに、屋外の通路や門廻りを改造する場合には敷地の形状も記入するので、配慮が必要です。

   このテキストのお宅やまるちゃん家は平屋ですが、

   「東西6間×南北3間半」程度のお宅なら、A4版・縦長で1階と2階の平面図を同じ用紙に記入できます。

    (実際は東西と南北が逆のこともあり「横方向6間×縦方向3間半」と表すべきですが、便宜上このように記します)

 

ここで役に立つ道具をご紹介します。「三角スケール」略して「サンスケ」君です。

名前の由来は「断面形状が三角でスケール(縮尺)を測る道具」という意味でしょう。

「そのままやんけ!」

計6種の目盛りが刻まれており、いちいち計算しなくてもその縮尺の寸法を読み取ることができます。

数年は使い込んでいるので細かい傷だらけ、アップに耐えられない顔になっています。

 

「作図上のルール、注意点2.縮尺」

で説明した、5o方眼の用紙で1/60の図を描くところです。

サンスケの目盛りは「1/600」ですが1/60として使います。

1マス5o×60=300ミリを303oとみなし、

描きやすいように1マス=1尺としてしまうわけです。

このようにサンスケを用紙にあてれば、

「間口6間=10.8メートルまでの平面図が収まる」ことがすぐわかります。

セクションペーパーに平面図(間取り図)を描くだけならサンスケは必須ではありませんが、あればたいへん便利です。

定価¥950程度ですが、百円ショップでも見たことがあるような気もします。

 

       1枚の用紙で1階と2階を表すことは、一目で両階のつながりがわかり、

       「なぜ2階を利用するのか。2階に上がる必要があるのか」

       などの理由説明に役立つためです。    

                ちなみに、わが国の住宅は一般的に「東西方向を長く」します。理由はわかりますね?

       日照や通風の条件のもっとも良い「南向きの部屋が大きくとれる」からです。

       浜松近辺のように大洋沿岸の東海道に沿って発展した地域では、メイン道路が東西方向となり、

                この道路に沿った敷地ならば東西方向に大きな住宅を建てることができます。

       逆に、信州に向かうような南北道路に面した敷地では奥行きを深くしないと、

       東西方向に大きな家が建ちません。

       「南北方向に長い」家を建てると、朝日と西日が良く当たり、

       南からの日照が少なくなってしまいます。

       「夏は朝夕暑く、冬は寒い」という条件が道路によって規定されることがあるのです。

       私の育った家がそうでしたが、身長が伸びなかったのはこれが原因?

       

2.実測しながら描き進めていく

   慣れれば基準線と一緒に柱や建具を記入していくこともできますが、

       まず基準線によって建物全体の間取りを完成させるのが無難です。

       細部まで書き込んでしまうと「壁の通りが1.5尺ずれていた」などに後で気づいた時に手直しがたいへんです。

   描き出しのポイントと対角線方向?の最終ポイントでこの基準線が閉じなければ(東西と南北方向の線が交わらない)

       場合はどこかで間違っているということです。

   

   製図のルールでは「基準線は一点鎖線」と定められており、図1もそうしています。

       他の線と明確に区別するためです。

   住宅改修費支給申請に使う図ならばこのルールに則る必要はないのですが、

       鉛筆で薄く一点鎖線をひくことを薦めます。

   実線(途切れていない線)や点線と混同しないようにして作図の間違いを減らすためです。 

   また、図1では便宜上寸法を記入しています。

       これも特に記入の必要はないのですが、手すりの長さや床の張り替え面積の積算などに役立つこともあります。

      

vol.4へ続く